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i-Constructionとは|令和6年度ICT施工 直轄89%・自治体ICT土工24%、2.0で目指す省人化3割

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i-Constructionとは|令和6年度ICT施工 直轄89%・自治体ICT土工24%、2.0で目指す省人化3割

この記事でわかること

i-Constructionは国土交通省が2016年から推進する建設業の生産性向上施策で、初期は「ICTの全面活用」「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)」「施工時期の平準化」の3つのトップランナー施策、2024年4月公表のi-Construction 2.0は「施工」「データ連携」「施工管理」の3つのオートメーション化の柱に再編されています。令和6年度(2024年度)のICT施工実施率は直轄土木工事89%・都道府県政令市のICT土工24%と発注者間で大きな格差があり、2.0は2040年度までに省人化少なくとも3割(すなわち生産性1.5倍)を目標としています。中小建設会社にとっての論点を制度全体像から整理します。

主要データ

  • ICT施工実施率(令和6年度=2024年度、公告件数ベース):直轄土木工事89%、都道府県・政令市のICT土工24%(国土交通省「ICT施工に関する状況報告」i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム)
  • 令和5→令和6の2年比較:直轄87%→89%(+2pt)、都道府県・政令市ICT土工23%→24%(+1pt)。直轄は5年連続80%台で頭打ち、自治体は緩やかな増加
  • 当初目標:2025年度までに建設現場の生産性を2割向上(国土交通省 i-Construction 公式説明)
  • i-Construction 2.0:2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性1.5倍向上(2024年4月16日公表、国土交通省)
  • i-Construction 2.0の3つのオートメーション化の柱:「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」

注記:本記事の実施率・数値は2026年5月時点の公表値です。発注者・工種・年度で集計範囲が異なるため、最新値は国交省公式公表でご確認ください。

i-Constructionは2016年から10年、令和6年度ICT施工は直轄89%・都道府県政令市のICT土工24%

i-Constructionは国土交通省が2016年4月に正式に動かし始めた建設業の生産性向上施策です。発端は2016年4月11日に公表された「i-Construction委員会報告書」で、当時の課題は技能労働者の高齢化、若手入職の停滞、製造業比で低迷する建設現場の生産性でした。出典は国土交通省 i-Construction委員会の報告書PDF(https://www.mlit.go.jp/common/001127288.pdf)。

2024年4月16日にはアップデート版である「i-Construction 2.0」が公表されました(国土交通省 報道発表 kanbo08_hh_001085、本文PDF 001738240.pdf)。2.0は2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍向上させることを目標としています。

令和6年度(2024年度)のICT施工実施率は、直轄土木工事89%・都道府県政令市のICT土工24%と、発注者間で65pt以上の差があります。直轄では5年連続80%台で頭打ち、自治体は緩やかな増加にとどまります。出典は国土交通省「ICT施工に関する状況報告」(001899631.pdf)。

関連ダッシュボードはデータで見る建設DXで月次更新しています。建設業の人手不足のマクロ構造は建設業の人手不足もあわせてご覧ください。

データで見る

ICT施工実施率(直轄 vs 自治体)

i-Constructionとは — 2016年4月から始まった国交省の生産性改革

i-Constructionは「Information and Communication Technology(ICT)を建設現場に全面導入し、設計から施工、検査、維持管理までの一連のプロセスで生産性を上げる」ことを軸とした国土交通省の施策です。2016年4月11日に「i-Construction委員会報告書」が公表され、同時期に開かれた国土交通省の生産性革命本部が推進体制を担う形で動き出しました。

当時の背景は3つあります。1つ目は建設業の高齢化です。建設業就業者の高齢化は他産業より進んでおり、技能労働者の大量退職リスクが現実化していました。2つ目は若手入職の停滞です。給与水準・労働環境・週休2日制の遅れなどの構造課題が累積していました。3つ目は生産性の低迷です。製造業の労働生産性が30年間で約2倍に伸びた一方、建設業はほぼ横ばいで推移していました。

制度の起点は2016年4月の i-Construction委員会報告書ですが、その後の国土交通省の公式説明では「2025年度までに建設現場の生産性を2割向上」を目標として整理しています(出典:国土交通省 i-Construction 公式説明 tec_tk_000062)。初期は土木工事が中心でしたが、現在は建築工事や維持管理にも波及しています。コンソーシアムも当初の「i-Construction推進コンソーシアム」から「i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム」に改称され、対象領域が広がっています。

初期 i-Construction — 3つのトップランナー施策

i-Constructionが業界で「5本柱」と語られる場面を見かけますが、公式整理ではこの呼称は確認できません。初期 i-Constructionの公式整理は「3つのトップランナー施策」です(2016年 i-Construction委員会報告書)。

(1) ICTの全面的な活用

ICT土工を最初の対象として、3次元測量データを設計・施工・検査の各段階で活用する取り組みです。ドローン測量、3次元設計データ、ICT建機(GPSやレーザーで自動制御される建機)、デジタル成果品の納品など、現場の一連の流れをデジタルでつなぎます。

(2) 全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)

現場打ちコンクリートをプレキャスト製品に置き換える、配筋を標準化する、部材をユニット化するなど、現場での手間と工期を圧縮する取り組みです。設計段階での共通化を進めることで、現場の手間と熟練技能依存を減らします。

(3) 施工時期の平準化

年度末3月に工事が集中し、夏季が空く「年度末偏重」を緩和する取り組みです。国債(複数年度契約)や債務負担行為の活用で発注時期を分散し、企業の稼働率と労働者の安定就業の両方を改善します。発注者の責任で進めるべき施策で、地方自治体での導入差が大きい領域です。

ICT施工の現在地 — 令和6年度 直轄89%・都道府県政令市のICT土工24%

i-Constructionの中で最も数値で進捗が見える領域がICT施工です。令和6年度(2024年度)の実施率は次の通りです。出典は国土交通省「ICT施工に関する状況報告」(001899631.pdf)。

区分

令和5年度

令和6年度

備考

直轄土木工事

87%

89%

ICT活用工事として公告した件数の割合(公告件数ベース)

都道府県・政令市

23%

24%

ICT土工の実施率(公告件数ベース)

直轄は5年連続80%台で、令和5→令和6で+2ptと頭打ちの様相です。一方の都道府県・政令市はICT土工に限定した数値で23%→24%(+1pt)、近年は20%台前半で緩やかな増加にとどまります。直轄の指標は土木工事全体のICT施工率、自治体の指標は土工に限定したICT土工率とスコープが異なるため、数値差65pt超を単純比較するのは適切でありません。それでも発注者間の普及差はi-Construction開始10年経っても解消されていないことが読み取れます。

代表的な主要対象工種は、ICT土工(最初の対象、現在も中心)、ICT舗装工、ICT浚渫工(河川/港湾)、ICT地盤改良、ICT付帯構造物設置工、ICT法面工、ICT構造物工(橋梁上部/橋脚・橋台)、ICT基礎工、ICT擁壁工、ICTコンクリート堰堤工などです。2017年度以降、対象工種は段階的に拡大してきました。なお、公式整理上の正式名称は工種ごとに表記揺れがあり、上記は代表的なものであって網羅ではありません。

編集部見解:自治体格差の要因として、設備投資余力・人材育成の遅れ・発注ロットの小ささ・小規模案件比率の高さなどが一因と考えられます(編集部による整理であり、一次資料の確定要因分析ではありません)。直轄が中大規模案件中心であるのに対し、自治体は小規模・中規模案件が多く、ICT機材の固定費に対する稼働確保が難しい構造です。

i-Construction 2.0 — 2040年に省人化少なくとも3割、すなわち生産性1.5倍

i-Construction 2.0は2024年4月16日に公表されました(国土交通省 報道発表 kanbo08_hh_001085、本文 001738240.pdf)。目標は「2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍向上」です。「省人化3割」と「生産性1.5倍」は公式文言上「すなわち」で接続されており、別KPIではなく同じことを2つの言い方で表現したものとして整理されています。

2.0の中身は「3つのオートメーション化の柱」です。

(a) 施工のオートメーション化

建機の自動運転、AI制御、遠隔施工など、人の作業を機械に置き換える領域です。ICT建機からさらに進んだ自動運転建機、無人化施工、土工以外の工種への自動化拡張が論点です。

(b) データ連携のオートメーション化

3次元データを設計・施工・検査・維持管理の各段階で連携させ、データ手入力や転記をなくす取り組みです。BIM/CIMの本格運用と国土交通データプラットフォーム等を通じたデータ連携が含まれます。

(c) 施工管理のオートメーション化

施工管理書類の電子化と削減、デジタル臨場(リモート立会い)、遠隔監督などです。書類削減は中小建設会社にとって特に効果が大きい領域で、現場代理人の事務作業時間を直接的に減らせます。

BIM/CIMの原則適用は令和5年度(2023年度)から開始し、現在は「全ての直轄土木業務・工事(小規模等を除く)に原則適用」されています。土木分野は国交省主導で先行しており、実施方針は令和8年3月版が現行です(出典:国土交通省 BIM/CIM関連 tec_fr_000184 令和8年3月版)。

中小建設会社にとっての論点 — 何をいつ始めるか

i-Constructionは大手ゼネコンや直轄受注事業者のものという印象が業界に根強く残っていますが、令和6年度の実施率89%は「直轄受注事業者にとってのICT施工は標準装備」を意味します。中小建設会社にとっても、公共工事の取引比率が高ければ無視できない論点です。

公共工事入札での総合評価方式での加点は、発注者と評価型式によって扱いが異なります。自社が主戦場としている発注者の評価方式を確認することが先決で、画一的な「加点が大きい」「効果が乏しい」という議論はできません。

ICT建機の導入は、リースと購入の選択肢があります。年間の稼働日数と工事の受注頻度で損益分岐が変わるため、最初はリースから始めて稼働を確かめる事業者が多いと編集部では受け止めています(編集部見解、一般論。具体的な金額や償却年数は機種・契約条件で大きく変わるため、本記事では数値は出しません)。

始める工種は、自社の受注実績の多い工種から入るのが現実的です。ICT土工は最初の対象工種であり、書籍・研修・実施事例が多く、参入のハードルは他の工種に比べて低い傾向です。

元請ゼネコンとの分業関係も論点です。中小がサブとして3次元データを受け取れる、または現場で生成したデータを元請に返せる体制を持っているかで、受注機会の幅が変わります。

失敗事例と落とし穴 — 投資が回収できないパターン

i-Construction導入で実際に起きている失敗パターンを3つ整理します。これらは事業計画段階で避けられるものです。

1つ目は「ICT建機を買ったが使いこなせない」です。機材を導入しても、現場でデータを扱える人材の育成、データ管理のための社内ITインフラ、運用ルールの整備が伴わないと、減価償却負担だけが残ります。導入前に運用体制を固めることが先決です。

2つ目は「データを取っても使う相手がいない」です。3次元データを生成しても、元請や発注者がデータ受領できる体制でないと無意味になります。発注者がICT活用工事として公告していない案件で先行投資しても、データ提出による加点もありません。

3つ目は「自治体工事の比率が高いのに3次元データが要求されない案件で先行投資」というケースです。直轄89%・都道府県政令市24%という発注者間格差は、中小建設会社にとって「主戦場の発注者の動きに合わせる」判断軸を意味します。自治体工事が中心の事業者は、自治体の対応スピードに合わせた段階的な投資が現実的です。

2026年度の論点 — 「i-Construction 2.0 躍動の年」

国土交通省は2026年度を「i-Construction 2.0 躍動の年」と位置付けています(出典:国土交通省 報道発表 kanbo08_hh_001324)。主要キーワードは3つです。

1つ目は「AI活用」です。建機制御、図面解析、検査の自動化など、AIを軸にした自動化が国交省の政策キーワードとして位置づけられ、議論が進んでいます。

2つ目は「規模(企業・工事)に依らない普及」です。これまで直轄中大規模案件で先行してきたICT施工を、中小企業・小規模工事・自治体工事に展開する施策が中心になります。簡易型ICT、低価格ICT建機、リース市場の整備が論点です。

3つ目は「試行から本格運用へ、さらに原則化へ」です。これまで試行段階だった工種・手法が本格運用に移行し、その先は原則として標準適用の対象を広げていく段階に進みます。i-Construction・インフラDX推進コンソーシアムでの議論加速も同じ方向です。

まとめ — 中小こそ早く動くべき理由

i-Constructionは2016年から10年が経ち、直轄土木89%・都道府県政令市のICT土工24%という発注者間の普及差(指標のスコープは異なる)が残ったまま、2024年4月の2.0で2040年省人化少なくとも3割(生産性1.5倍)に向かいます。「ICT建機は高い」「大手しか使えない」という10年前の固定観念は、令和6年度の数字を見れば直轄ではすでに通用しません。

中小建設会社にとっての論点は3点に集約できます。1点目、公共工事比率が高い事業者ほど加点取得の重要性が増す可能性があるため、自社の主戦場発注者の評価方式を確認すること。2点目、ICT土工1工種を「2027年度までにモノにする」を最低ラインとして、リース→自社運用の段階を踏むこと。3点目、自治体工事中心の事業者は、自治体の対応スピードに合わせた段階的な投資設計をすること。

i-Construction 2.0は「省人化3割」を看板に掲げますが、その先で問われるのは「省人化した上で何を残すか」です。経営判断としては、ICT・データ・自動化に対応した中堅人材を社内に確保することが、20年・30年先の経営に効くと考えられます。

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出典:各省庁公式データ。最終更新日を必ずご確認ください。
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