
この記事でわかること
国土交通省の建設工事費デフレーターで建設総合は2025年12月時点で133.2(2015年度=100、e-Stat 2026年3月31日更新)。10年で約33%の上昇です。建設物価調査会の建築費指数では、2026年2月の木造住宅が149.2、集合住宅RC造が143.2となり、従来「RC造が最大の伸び」とされていた構造別比較が、ここ数年で木造住宅優位に逆転しています。公共工事設計労務単価は2026年3月適用で加重平均25,834円、14年連続上昇。単一の「建設費高騰」ではなく、構造別・資材別に動きが分かれる局面です。
主要データ
- 建設工事費デフレーター(建設総合、2015年度=100):2025年12月で133.2、10年で+33.2%(国土交通省、e-Stat 2026年3月31日更新)
- 建設物価調査会「建築費指数」(2015年=100、2026年2月分):木造住宅149.2、集合住宅RC造143.2、いずれも2015年比で大幅上昇
- 公共工事設計労務単価:2026年3月適用で全国全職種加重平均25,834円、全国全職種単純平均で前年度比+4.5%、14年連続上昇(国土交通省、2026年2月17日公表)
- 日銀CGPI(2020年=100、2026年2月分):生コン156.5、セメント166.2、小形棒鋼149.4、製材136.6(ピーク2021年9月169.2から低下)
- 2024年6月公布の改正建設業法で労務費の基準・違反疑い時の建設Gメン調査が制度化、価格転嫁の制度的根拠が整備
注記:本記事の指数・価格情報は公表時点の参考値です。実際の取引価格は地域・取引条件・時期により異なります。最新値は各統計の公式公表でご確認ください。
「建設費が上がっている」という現場感覚は、データで見ると明確に裏付けられています。国土交通省の建設工事費デフレーター(建設総合)は2025年12月時点で133.2。2015年度を100とした基準で、10年間で約33%の上昇です。年率換算でおよそ+2.9%。総務省の消費者物価指数(総合)の同期間の年平均上昇率と比べても、建設コストの上昇ペースが大きく上回ってきたことが読み取れます。
ただし、「建設費が一律に上がっている」という言い方は2026年時点では正確ではありません。建設物価調査会の建築費指数を見ると、2026年2月分で木造住宅が149.2、集合住宅RC造が143.2。木造住宅の上昇率がRC造を上回る局面に入っています。2021年のウッドショック期にCGPI製材指数は169.2のピークを付けたあと一度落ち着き、2026年2月時点では136.6と高水準で推移しています。木造住宅の建築費指数は10年で約5割の伸びとなっており、製材価格そのものはピーク比で軟化したものの、設備・労務費などを含めた実勢価格ベースでは依然として上昇傾向です。
本記事では、国交省デフレーター・建設物価調査会建築費指数・日銀CGPI・公共工事設計労務単価の一次データから建設費高騰の現状を整理し、中小建設会社の経営判断に翻訳できる形でまとめます。
関連ダッシュボードはデータで見る建設コストで月次更新しています。
建設工事費デフレーターの推移:構造別の動き
国交省「建設工事費デフレーター」は、建設工事の名目工事費を実質額に変換するためのデフレーター指標で、2015年度を基準(=100)として作成されます。建築・土木を合わせた建設総合のほか、構造別の指数が月次で公表されます(出典:国交省、e-Stat 2026年3月31日更新。本稿では構造別比較のため2025年12月値で統一)。2025年12月時点の主要系列を整理します。
系列 | 2025年12月指数 | 2015年度比 |
|---|---|---|
建設総合 | 133.2 | +33.2% |
木造住宅 | 130.9 | +30.9% |
鉄筋造(RC) | 134.9 | +34.9% |
鉄骨鉄筋(SRC) | 133.4 | +33.4% |
鉄骨(S造) | 133.7 | +33.7% |
土木総合 | 133.2 | +33.2% |
建設総合と土木総合がほぼ同水準で推移する一方、構造別では鉄筋造(RC)が134.9で最大の伸びを示しています。RC造の上昇は、生コン・異形棒鋼・セメントといった躯体資材の価格上昇が直撃する構造のためです。木造住宅は130.9と建設総合よりやや低い水準ですが、これは建設工事費デフレーターが投入コストベースで作成されている関係で、後述する建設物価調査会の建築費指数(実勢価格ベース)とは結果が異なります。
建設物価調査会の建築費指数:木造149.2がRC造143.2を上回る
一般財団法人建設物価調査会が公表する「建築費指数」は、実勢価格をベースに資材費・労務費・経費を集計した指数で、構造別に毎月発表されます。2026年2月分では以下の水準です(出典:建設物価調査会「建築費指数」2026年2月公表分、2015年=100基準)。
- 木造住宅:149.2(2015年比+49.2%)
- 集合住宅RC造:143.2(2015年比+43.2%)
従来「RC造の建築費上昇幅が最も大きい」と語られることが多かった建設費高騰は、2026年時点では木造住宅がRC造を上回る局面です。製材価格が2021年9月のピーク(CGPI製材指数169.2)からは下落したものの、2026年2月時点で136.6と依然高水準で推移しています。木造住宅の建築費上昇には資材価格に加えて需要面・仕様要件の動向も背景の一つとして指摘されることがあり、複数要因が絡んでいる可能性があります。
同じ「建設費」でも、国交省デフレーター(投入コストベース)と建設物価調査会の建築費指数(実勢価格ベース)で構造別の順位が異なる点は、見積もりや経営判断の場面で意識する必要があります。両者は性質が異なる指標で、どちらが正しいというものではなく、用途に応じて使い分けるのが実務です。
主要資材の価格推移:CGPI で見る2020年比の上昇率
資材別の価格動向は、日本銀行「企業物価指数(CGPI)」で月次に確認できます。2020年=100の基準で、2026年2月時点の主要建設資材を整理します(出典:日本銀行「企業物価指数」2026年2月公表分)。
資材 | 2026年2月指数 | 2020年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
生コンクリート | 156.5 | +56.5% | 地場資材で輸送制約あり、地域差大 |
セメント | 166.2 | +66.2% | 石灰石焼成のエネルギーコスト直撃 |
小形棒鋼 | 149.4 | +49.4% | 2025年初頭の160.1から軟化 |
製材 | 136.6 | +36.6% | 2021年9月のピーク169.2から低下 |
注目すべきは、すべての資材が同じペースで上昇しているわけではない点です。生コン・セメントは2024年以降も継続的に上昇する一方、小形棒鋼は国際鋼材市況の軟化で2025年初頭から軟化傾向。製材はウッドショック後に高止まりしつつも、ピークからは下落しています。「建設費が一律に高騰している」という捉え方ではなく、「資材ごとに動きが分かれている」というのが2026年時点の実態です。
公共工事設計労務単価:2026年3月適用で加重平均25,834円・14年連続上昇
建設費高騰のもう一つの軸が、労務費の継続的な上昇です。国土交通省は2026年2月17日に2026年3月適用の公共工事設計労務単価を公表しました。全国全職種の加重平均値は25,834円、単純平均で前年度比+4.5%の引き上げとなり、14年連続の上昇です(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」2026年2月17日公表)。
労務費の構造的な上昇は、技能労働者の高齢化と若年入職者の不足に起因する人手不足が背景にあります。短期間での解消は見込みにくく、設計労務単価の上昇トレンドは中期的にも続く可能性が高いと見るのが現実的です。設計労務単価は公共工事の積算基準ですが、民間工事の賃金水準にも波及するため、建設会社全体のコスト構造に影響します。
改正建設業法と価格転嫁の制度的根拠
2024年6月公布の改正建設業法では、中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告する枠組みが設けられ、著しく低い労務費による見積もり・契約の締結が禁止されました。違反の疑いには、国土交通省の「建設Gメン」が立ち入り調査を行う運用が整備されています(出典:国土交通省「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」2024年6月公布)。
これにより、資材価格・労務費上昇分の転嫁交渉について、法制度上の根拠が明確化されました。公共工事ではインフレスライド条項による価格調整が従来からありましたが、民間工事では契約書に価格スライド条項を明示していないケースが多く、実務上の交渉余地が残されていました。改正法の段階施行と建設Gメンの運用拡大に伴い、民間工事の取引慣行も変化していく可能性があります。
経営判断への翻訳:中小建設会社が取れる現実的な打ち手
建設費高騰が一時的な現象ではなく構造的な変化である以上、「いずれ下がる」という前提での経営判断は危険です。中小建設会社が取れる現実的な打ち手を 3 点に絞って整理します。
1. 見積もり有効期限を 30 日以内に短縮する
従来の見積もり有効期限(1〜3 か月)は、月単位で資材価格が動く現状では原価割れリスクを抱えます。30 日以内に短縮し、見積書に「資材価格の変動が激しいため」と理由を明記することで、発注者の理解を得やすくなります。期限を過ぎた案件は再見積もりを原則とする社内ルールを徹底するのが第一歩です。
2. 過去実績の単価補正に CGPI と国交省デフレーターを使う
過去の類似案件の実績単価を流用するときは、最新の指数で補正をかけます。基本式は「過去単価 × (現在指数 ÷ 過去同月の指数)」。例えば過去施工時の鉄筋造デフレーター指数が 110 だった案件であれば、現在の 135.3 で割って補正係数約 1.23 が得られます。1 平米 23 万円の単価を補正すれば約 28 万円台の参考値になる計算です。過去同月の指数は e-Stat の月次系列で確認できます。仕様・地域・ボリュームで実勢は動くため、初期見積もりの当たりをつけるための補正であり、本番の積算は実勢単価で組み直す必要があります。
3. 民間契約に価格スライド条項を入れる交渉
工期が 1 年を超える案件では、契約時点と着工時点で資材価格が動くリスクを織り込む必要があります。「主要資材の価格が契約時点から ○% 以上変動した場合、差額を精算する」といった条項を契約書に盛り込む交渉を、標準プロセスに組み込む価値があります。改正建設業法の運用が広がるなかで、発注者側でも価格スライド条項を受け入れる土壌が整いつつあります。
参照出典
- 国土交通省「建設工事費デフレーター」(2015年度=100、本稿では構造別比較のため2025年12月値で統一、e-Stat 2026年3月31日更新):https://www.e-stat.go.jp/statistics/00600270
- 建設物価調査会「建築費指数」2026年2月公表分(2015年=100):https://www.kensetu-bukka.or.jp/
- 日本銀行「企業物価指数(CGPI)」2026年2月公表分(2020年=100):https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/index.htm
- 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」2026年2月17日公表:https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00337.html
- 国土交通省「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(2024年6月公布):https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk1_000001_00033.html
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免責
本記事は2026年4月時点の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の経営判断・法規解釈・投資判断の助言ではありません。建設工事費デフレーター・建築費指数・CGPI・設計労務単価は月次・年度ごとに更新され、改正建設業法の段階施行内容も変更される場合があります。実際の見積もり・契約・取引判断は最新の公式データと専門家の助言に基づいて行ってください。


