
この記事でわかること
国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」によると、2024年のリフォーム市場は13.83兆円に達しました。ただし成長を牽引しているのは非住宅(オフィス・商業施設等)であり、住宅リフォームは4.1兆円台で横ばいが続いています。NRIや矢野経済研究所が公表する「リフォーム市場9兆円」との数字の違いは定義の差です。新築着工が減少局面に入るなか、建設業の事業転換先としてリフォーム参入が注目されていますが、成功と失敗を分ける要因をデータから分析します。
主要データ
- 2024年リフォーム・リニューアル市場:13兆8,303億円(2011年比+63%、国土交通省)
- 住宅リフォーム:4兆1,318億円、非住宅:9兆6,984億円(2024年、国土交通省)
- 改装・改修工事:13兆262億円、増築工事:4,559億円(2024年、国土交通省)
- 増築工事は2017年の8,512億円から46%減少(2024年、国土交通省)
本記事の数値は国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査」の公表値に基づきます。最新値・調査時点は必ず原典をご確認ください。
リフォーム市場13.8兆円 — 成長の実態は非住宅が主導
2024年の建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は13兆8,303億円でした。2011年の8兆5,053億円から63%増加しています。
ただし、この数字をそのまま「住宅リフォーム市場が拡大している」と読むのは誤りです。
内訳を見ると、非住宅(オフィス・商業施設・工場など)が9兆6,984億円で全体の70%を占めます。住宅リフォームは4兆1,318億円にとどまり、2011年の3兆706億円から35%の伸びはあるものの、近年は3〜4兆円台で推移し、2020年以降は緩やかな回復〜高止まり傾向です。
つまり、リフォーム市場の成長エンジンは住宅ではなく非住宅です。この構造を理解せずに「リフォーム市場は拡大している」と住宅事業の参入判断をすると、見込み違いが起こります。
「リフォーム市場9.2兆円」と「13.8兆円」の違い
リフォーム市場の規模を調べると、情報源によって数字が大きく異なります。
野村総合研究所(NRI)の住宅市場展望(2025年6月公表)では「2040年の住宅リフォーム市場 約9兆円」、矢野経済研究所の住宅リフォーム市場規模調査でも近年は7兆円台の水準と公表されています。一方、国土交通省の調査では13.8兆円です。同じ市場を測っているはずなのに、なぜ倍近い差が出るのでしょうか。
原因は定義の違いです。
国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」は、建設業者が元請として受注した改装・改修工事の完成工事高をカウントします。住宅だけでなくオフィス・商業施設・工場の改修も含みます。対象は一定規模以上の請負工事に限られます。
NRIや矢野経済研究所の調査は「住宅リフォーム市場」に限定しています。ただし、DIY、家具・インテリアの購入、エクステリア工事なども含む広義の定義です。
どちらが正しいという話ではありません。経営判断の用途に応じて使い分ける必要があります。建設業の受注動向を見るなら国交省データ、住宅リフォーム事業の市場ポテンシャルを測るならNRI・矢野のデータが適しています。
増築は縮小、改装・改修が13兆円を突破
リフォーム工事の中身も大きく変わっています。
2017年に8,512億円あった増築工事は、2024年には4,559億円まで46%減少しました。一方、改装・改修工事は11兆1,074億円から13兆262億円へ17%増加しています。
この構造変化の背景には、「壊して建てる」から「活かして直す」への転換があります。築40年超のオフィスビルの耐震補強、省エネ改修、設備更新といった大規模改修案件が増えています。
住宅でも同様の傾向があります。新築の代わりに中古住宅を購入してリノベーションする動きは、東京都心部や大阪市内で定着しつつあります。ただし、前述のとおり住宅リフォーム市場全体の規模は横ばいです。
建設業のリフォーム参入 — 成功と失敗の分かれ目
新築着工が2025年に約74万戸(国土交通省 住宅着工統計)まで減少するなか、リフォーム事業への参入を検討する建設会社が増えています。
成功するパターンには共通点があります。まず、新築とリフォームでは見積りの精度が根本的に異なることを理解している会社です。新築は図面から積算できますが、リフォームは解体してみないとわからない部分が多く、想定外の追加工事が利益を食います。リフォーム専業に近い体制を組む工務店では、事前の現場調査に十分な時間を割くことで赤字案件の発生率を抑える運用が一般的に紹介されています。
失敗するパターンも明確です。新築の延長でリフォームに参入し、新築と同じ歩掛で見積もった結果、工事原価が見積りの120〜130%に膨らむケースが典型です。特に築30年超の木造住宅では、筋交いの位置が図面と異なる、配管経路が想定外といった事態が頻発します。「解体してみたら想定と違った」は、リフォーム工事では例外ではなく日常です。
非住宅リフォームは単価が大きく、元請の建設会社にとって参入障壁が低い分野です。ただし、設計事務所や発注者との既存の取引関係が参入の可否を左右します。
着工減少時代のポートフォリオ戦略
NRIは2040年の新設住宅着工を約61万戸(NRI住宅市場展望、2025年6月公表)、三菱UFJリサーチ&コンサルティングは2050年に30万戸台まで半減すると公表予測しています(各社レポート)。新築だけに依存する経営は持続困難です。
事業ポートフォリオの再構築には3つの方向性があります。
1つ目は、新築とリフォームのミックスです。リフォームは新築ほどの売上規模にはなりませんが、景気変動に左右されにくく、安定した収益基盤になります。新築の施工実績がある顧客へのリフォーム提案は、新規営業より成約率が高い傾向があります。
2つ目は、非住宅リフォームへの展開です。前述のとおり、市場全体の7割は非住宅が占めます。オフィス改修、耐震補強、省エネ改修は今後も安定した需要が見込めます。特にインフラの老朽化対策は国策として年間数兆円規模の予算が投じられており、公共施設の長寿命化工事は中小建設業にとって有望な分野です。詳しくはインフラ老朽化ダッシュボードをご覧ください。
3つ目は、空き家関連事業です。全国の空き家は900万戸に達し、解体工事とリノベーション双方の需要が拡大しています。ただし、地方の空き家は改修費用に見合う賃料・売却価格が得られないケースも多く、事業性の見極めが求められます。
新築着工の推移と市場予測の詳細は、住宅市場ダッシュボードで最新データを確認できます。建設業の人材確保については人材・労働ダッシュボードもあわせてご参照ください。

